甲府地方裁判所 昭和60年(わ)230号 判決 1986年1月13日
本籍
甲府市中央二丁目二〇六番地
住居
同市中央二丁目七番三号
会社役員(装身品ケース製造業)
立川昭雄
昭和三年六月九日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は、検察官渡邉康出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年二月及び罰金三〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、甲府市中央二丁目七番三号において、「立川ケース製作所」の商号で印章用ケース等の製造卸業を経営しているものであるが、自己所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、
第一 昭和五六年分の実際総所得金額が七七、二四一、四五〇円あったにもかかわらず、同五七年三月一五日、甲府市丸ノ内一丁目一一番六号所在の所轄甲府税務署において、同税務署長に対し、同五六年分の総所得金額が一〇、八四九、二六三円でこれに対する所得税額が二、四二三、八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四〇、〇二〇、五〇〇円と右申告税額との差額三七、五九六、七〇〇円を免れ、
第二 同五七年分の実際総所得金額が六九、一〇三、九九二円あったにもかかわらず、同五八年三月一二日、同税務署において、同税務署長に対し、同五七年分の総所得金額が七、八〇二、八四七円でこれ対する所得税額が一、四七三、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額三三、三五〇、五〇〇円と右申告税額との差額三一、八七七、二〇〇円を免れ、
第三 同五八年分の実際総所得金額が八一、八七七、九三九円あったにかかわらず、同五九年三月一五日、同税務署において、同税務署長に対し、同五八年分の総所得金額が一二、二一七、一四五円でこれに対する所得税額が三、一六二、八〇〇円ある旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額四二、四九八、六〇〇円と右申告税額との差額三九、三三五、八〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述書五通
一 大蔵事務官作成の売上調査書、検査てん末書二通、期首たな卸高調査書、仕入調査書、期末たな卸高調査書、水道光熱費調査書、通信費調査書、減価償却費調査書、福利厚生費調査書、給料賃金調査書、利子割引料調査書、貸倒引当金繰戻額調査書、専従者給与調査書、貸倒引当金繰入額調査書、専従者控除調査書、証明書、賃貸料調査書、礼金調査書、減価償却費(不動産)調査書、借入金利子調査書、青色申告控除額調査書、利子収入調査書、給付補填備金調査書
一 小宮山俊彦、小宮山正及び立川美智子の検察官に対する各供述書
一 登記簿謄本一七通
一 押収してある所得税青色申告承認申請書(昭和六〇年押第七五号の7)
判示第一、第二の各事実につき
一 大蔵事務官作成の価格変動準備金繰戻額調査書
判示第一、第三の各事実につき
一 大蔵事務官作成の譲渡収入調査書及び譲渡原価調査書
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の組合費調査書及び価格変動準備金繰入額調査書
一 押収してある所得税確定申告書(昭和五六年分)一枚(同押号の1)及び青色申告決算書(昭和五六年分)一綴(同押号の2)
判示第二の事実につき
一 検察官の昭和六〇年八月五日付報告書及び同日付捜査報告書
一 大蔵事務官作成の事務費調査書及び雑費調査書
一 押収してある所得税確定申告書(昭和五七年分)一枚(同押号の3)及び青色申告決算書(昭和五七年分)一綴(同押号4)
判示第三の事実につき
一 大蔵事務官作成の荷造運賃調査書、消耗品費調査書及び貸倒金調査書
一 押収してある所得税確定申告書(昭和五八年分)一枚(同押号の5)及び青色申告決算書(昭和五八年分)一綴(同押号の6)
(法令の適用)
一 罰条
判示各所為につき 所得税法二三八条
一 刑種の選択
いずれも懲役刑及び罰金刑(併科)
一 併合罪の処理
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑につき犯情の最も重い判示第三の罪の刑に加重)
一 労役場留置
刑法一八条
一 執行猶予
刑法二五条一項(懲役刑につき)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 片岡博)